★筋力トレーニング★この文章は、2005年度、東京都某区の消費生活通信講座のテキスト用に、書いたものです。2」 筋力トレーニング(レジスタンス・トレーニング) 高齢者の老化防止の項でも書きましたが、歳をとってからの様々な不具合 (老年症候群)の多くは、筋肉が弱ってきたことが原因で起こると考えられま す。筋肉は適度に鍛えれば、「動作性肥大」が起き、強くなり、使わなけれ ば、「廃用性の萎縮」が起き、弱まります。 「よく歩いているから、大丈夫。」と思われるかもしれませんが、それだけ では筋力の低下は防げません。人間の骨格筋のそれぞれの筋肉は、2種類の 筋繊維がまじり合って構成されています。 ● 筋肉の種類 タイプ1繊維(遅筋繊維)・・・長距離型の筋肉で、姿勢の保持、立つ、ウ ォーキングなどで使われる。短縮速度は遅 く、発揮する力は弱いが、持久力がある。 タイプ2繊維(速筋繊維)・・・短距離型の筋肉で、走ったり、跳んだりな ど瞬発的な力を出す時に使われる。短縮速 度は速く、発揮する力も強いが、疲れやす い。日常の生活ではあまり使わないので衰 えやすい。 ★タイプ2は、さらにタイプ2a.タイプ2bに分けられます。タイプ2aは、 タイプ1と2の中間の性質を持ちます。 歩く時に使われる筋肉は、タイプ1の筋肉なので、いくら歩いてもタイプ 2繊維の衰えは食い止められないのです。加齢による筋力の低下を防ぐに は、ウォーキングなどの有酸素運動と筋力トレーニングの両方を組み合わせ て、タイプ1、タイプ2の両方の筋肉を鍛えていく必要があります。 ● レジスタンス・トレーニング 筋力の向上を目的としたトレーニングをレジスタンス・トレーニングとい います。マシン、バーベル、ダンベル、チューブなどの道具を使ったり、腕 立て伏せのように自分の体重を負荷に使ったりして、筋肉に何らかの抵抗を 与えて行うトレーニングの総称です。 ● レジスタンス・トレーニングの方法 {強 度} 初級者と中級者は、最大筋力(一回やっと持ち上げられる重量1RM)の6 0%に相当する強さでトレーニングします。それは、8~12回反復してや っと行える強さです。 「過負荷の原則」といって、トレーニングの効果を得るためには、普段より 強い負荷をかける必要があります。 { 量 } 肩、腕、背、胸、腹、尻、脚などのそれぞれの部位について8~12回ず つ行い、慣れてきたら、2~3セット行います。 「特異性の原則」といって、トレーニング効果は、行う運動の特殊性と使わ れる筋肉に依存します。上半身だけ鍛えても、下半身には、効果が出ませ ん。身体のいろいろな部位をまんべんなく鍛えることが大切です。 { 頻度 } 1週間に2~3日 休みを入れることも大切です。 ● レジスタンス・トレーニングの注意点 ・力を出す時に、呼吸を止めていきむと、血圧が高くなり、心臓への負担を 大きくします。 呼吸は、止めずに行いましょう。 ・無理をしないで、はじめは軽い負荷から行いましょう。 ● レジスタンス・トレーニングの効果 1. 転倒予防 ・日常生活動作の向上 つま先を持ち上げるすねの筋肉(前けい骨筋)や膝を上げる筋肉(大腰 筋)等を鍛えることで、つまずかないようになります。立つ、座る、起き 上がるなどの起居動作、歩く、走る、階段を昇降などの歩行動作が楽にで きるようになります。 2. 腰痛予防・変形性膝関節症の予防 腰痛には、腹筋、背筋、大腰筋を、膝痛には、太ももの前の筋肉(大腿四 頭筋)を鍛えることにより、腰痛や、膝痛を予防、軽減します。 3. 糖尿病の予防・血圧を下げる・血中脂質の改善 最近の研究によると、有酸素運動だけを行うより、有酸素運動にレジスタ ンス・トレーニングを合わせて行った方が、生活習慣病を防ぐ効果が上がると いわれています。 4.肥満の解消 筋量が増えると、基礎代謝があがり、エネルギーの代謝が高まるので、太 りにくい体質になります。また、脂肪の量を調整している自律神経の働きが 良くなるので、摂食中枢、満腹中枢のバランスが整い、太りにくくなりま す。 5.骨を強くする 筋肉を鍛えると、骨に刺激を与え、骨粗しょう症の予防になります。 これらの効果が出てくると、疲れにくくなり、精神的な自信が生まれ、生 活の質が高まってきます。 |